投稿記事
<<非財務情報から企業戦略の方向性を読み解く>>
2022-12-11
現在開催中のサッカーW杯では、各試合の終了後、敗戦国は、敗因を様々な視点で分析します。選手の走行距離・スピード、パスの数や保有時間など。どの要因が勝敗に大きな影響を与えていたのかを分析し、勝率を少しでも高めるため、今後の修正・強化点を見出します。ちなみに、最近のビジネスシーンおいても、「データ分析」が大変注目されていますが、なかでも、「非財務情報」と業績・企業価値等の財務指標との相関分析に注目が集まっています。非財務情報と財務指標との相関関係が分かれば、非財務情報の当該項目について改善・強化することで企業の財務“勝率”が高まると考えるからです。
■「非財務情報」とは、企業が投資家や株主、債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の情報を指します。企業が定期的に市場に開示する各種文書、例えば有価証券報告書やCSR報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなどで報告される情報がこれにあたります。最近では、非財務情報の中でも「気候変動対策の取り組み(CO2排出量削減)」「女性管理職比率」「男女間賃金格差」「従業員エンゲージメント」などが重視されています。
非財務情報が注目される背景としては、欧米の主要企業は、無形資産を有効活用して、収益性を高めており、無形資産の活用が戦略上、重視されているからです。つまり、「無形資産の活用情報=非財務情報」に投資家が注目しているわけです。なかでも、気候変動対策や人的資本の活用が業績に与える影響が統計的に有意と分析されており、欧米の主要企業がこの分野に積極的に投資を行っています。
■日本ではどのような状況でしょうか。日本企業では、時価総額の32%が無形資産ですが、実は、米国主要企業はなんと90%。日米の格差をあまりにも大きいです。そこで、グローバル展開する日本の大手企業の中には、海外投資家に自社の取り組みを理解してもらうため、非財務情報の開示に積極的です。なおかつ、無形資産(非財務情報)が企業価値等の財務指標にどう影響を与えるのか、各社独自の分析と説明をおこなっています。その取り組み事例を以下にご紹介します。
【日立製作所】
日立は京都大学と、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みが、企業の稼ぐ力を示すROIC(投下資本利益率)をどう高めるのかを推計しました。その結果、日立による温暖化ガスの排出量、産業廃棄物や水の使用量の削減といった取り組みは、2017~20年度までの4年平均のROIC(QUICK・ファクトセットによると7.1%)を約1ポイント押し上げる効果があったそうです。今後はESGの取り組みと財務項目ごとの因果関係を分析する予定です。
【日清ホールディングス】
エーザイの元CFOの柳良平氏は、ESGの改善は将来の企業価値に反映されると仮定して、CO2排出量や女性管理職比率などの指標と株式市場での企業評価を示すPBR(株価純資産倍率)との関係を分析しました。
日清食品ホールディングスは、柳氏の分析手法を活用し、約270のESG指標がそれぞれ何年後のPBRと連動するかを調べたところ、多くの項目が企業価値と関係することがわかりました。例えば、CO2排出量が1%減少すると8年後のPBRが1%上昇するという関係があったという。
【JR東日本】
JR東日本も同様の分析をし、従業員1人当たりの年間平均研修時間を1%増やすと、その年のPBRが0.54%向上すると示しました。
■最後に
先日、国が発表しましたように、2023年3月期決算企業は、指定された項目に関する非財務情報を有価証券報告書に記載することが義務付けられます。非財務情報を形式的に掲載しても投資家にアピールできなければ意味がありませんので、上述の企業のように、非財務情報が企業価値やROIC等の重要財務指標にどのように影響を与えるかも記述する必要があります。今後は、各企業がどのような戦略ストーリーを描くのか、そこに注目してみてください。各社の経営陣が重視する非財務情報(無形資産)への全社的取り組みが、現場の施策(企画・開発・営業・マーケティング・人事等)に反映されるはずです。
■「非財務情報」とは、企業が投資家や株主、債権者などに対して開示する情報のうち、財務諸表などで開示される情報以外の情報を指します。企業が定期的に市場に開示する各種文書、例えば有価証券報告書やCSR報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなどで報告される情報がこれにあたります。最近では、非財務情報の中でも「気候変動対策の取り組み(CO2排出量削減)」「女性管理職比率」「男女間賃金格差」「従業員エンゲージメント」などが重視されています。
非財務情報が注目される背景としては、欧米の主要企業は、無形資産を有効活用して、収益性を高めており、無形資産の活用が戦略上、重視されているからです。つまり、「無形資産の活用情報=非財務情報」に投資家が注目しているわけです。なかでも、気候変動対策や人的資本の活用が業績に与える影響が統計的に有意と分析されており、欧米の主要企業がこの分野に積極的に投資を行っています。
■日本ではどのような状況でしょうか。日本企業では、時価総額の32%が無形資産ですが、実は、米国主要企業はなんと90%。日米の格差をあまりにも大きいです。そこで、グローバル展開する日本の大手企業の中には、海外投資家に自社の取り組みを理解してもらうため、非財務情報の開示に積極的です。なおかつ、無形資産(非財務情報)が企業価値等の財務指標にどう影響を与えるのか、各社独自の分析と説明をおこなっています。その取り組み事例を以下にご紹介します。
【日立製作所】
日立は京都大学と、ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みが、企業の稼ぐ力を示すROIC(投下資本利益率)をどう高めるのかを推計しました。その結果、日立による温暖化ガスの排出量、産業廃棄物や水の使用量の削減といった取り組みは、2017~20年度までの4年平均のROIC(QUICK・ファクトセットによると7.1%)を約1ポイント押し上げる効果があったそうです。今後はESGの取り組みと財務項目ごとの因果関係を分析する予定です。
【日清ホールディングス】
エーザイの元CFOの柳良平氏は、ESGの改善は将来の企業価値に反映されると仮定して、CO2排出量や女性管理職比率などの指標と株式市場での企業評価を示すPBR(株価純資産倍率)との関係を分析しました。
日清食品ホールディングスは、柳氏の分析手法を活用し、約270のESG指標がそれぞれ何年後のPBRと連動するかを調べたところ、多くの項目が企業価値と関係することがわかりました。例えば、CO2排出量が1%減少すると8年後のPBRが1%上昇するという関係があったという。
【JR東日本】
JR東日本も同様の分析をし、従業員1人当たりの年間平均研修時間を1%増やすと、その年のPBRが0.54%向上すると示しました。
■最後に
先日、国が発表しましたように、2023年3月期決算企業は、指定された項目に関する非財務情報を有価証券報告書に記載することが義務付けられます。非財務情報を形式的に掲載しても投資家にアピールできなければ意味がありませんので、上述の企業のように、非財務情報が企業価値やROIC等の重要財務指標にどのように影響を与えるかも記述する必要があります。今後は、各企業がどのような戦略ストーリーを描くのか、そこに注目してみてください。各社の経営陣が重視する非財務情報(無形資産)への全社的取り組みが、現場の施策(企画・開発・営業・マーケティング・人事等)に反映されるはずです。
<関連情報>
▼日本経済新聞 2022年12月11日 ESGの効果を財務数値に 企業、投資家向け可視化
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66733970R11C22A2EA1000
▼日本経済新聞 2022年12月11日 (社説)企業は多様な情報を発信し競争力磨け
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO66734090R11C22A2EA1000
