投稿記事
<<世界最高のデジタルバンクの評価を得ているDBS>>
2023-02-06
皆さんは、世界最高のデジタルバンクと評価をされているDBSをご存知ですか?シンガポールに本拠を置くDBS(the Development Bank of Singapore)は、1968年にシンガポール政府によって国の近代化のために設立され、現在約33,000人の従業員を抱える東南アジア最大級の銀行です。同行は銀行業務のあらゆるプロセスやサービスにデジタルを組み込むという点で、先駆者的存在と広く評価されていて、金融専門誌「Euromoney」や「Global Finance」といった複数のメディアから、「世界最高の銀行」、「世界最高のデジタルバンク」と評価されています。
【変革前の状況】
現在でこそ輝かしい評価と実績を誇るDBSですが、初めから評価が高かったわけではありません。現Chief Data and Transformation Officerは、銀行の変革を開始した2009年の同行の評判は、「スピードが遅い・顧客サービスが悪い・財務状況が平均的」というものでした。
【変革前の状況】
現在でこそ輝かしい評価と実績を誇るDBSですが、初めから評価が高かったわけではありません。現Chief Data and Transformation Officerは、銀行の変革を開始した2009年の同行の評判は、「スピードが遅い・顧客サービスが悪い・財務状況が平均的」というものでした。
【変革の取り組み】
そこで同行は、欧米の銀行との差別化を図るために「アジアらしさ」を提供することにして、「アジアらしさ」を「尊敬できる、接しやすい、信頼できる」と定義、現在は、「RED(Respectful, Easy to deal with, and dependable)」という形容詞となり、社内の用語として定着しています。
「アジアらしさ」を実現するために、PIE(Process improvement events)と呼ばれる部門横断的なチームを組成、銀行のサービス上の課題(例:クレジットカード紛失した場合の交換にかかる時間)に対し、1週間以内に実行可能なプロセス案を検討しました。PIEによってさまざまな業務プロセスが迅速かつ目に見える形で改善され、インセンティブを用いずとも組織全体の社員の意欲を高めることができました。
経営陣は組織のプロセス改善だけでなく、顧客サービスの改善にも取り組みました。顧客の待ち時間を象徴する指標として「Customer hour」という単位を考案し、PIEのコンセプトによって年間2億5千万時間の「Customer hour」を削減することに成功しました。(顧客がクレジットカードの作成に1時間待つと1 Customer hour)この取り組みは、お客様の生活をより良くすることに焦点を当てたもので、銀行の利益を上げることとは異なり、従業員に目的意識を共有させるものでした。
DBS銀行のデジタル化への本格的な取り組みはCEOのPiyush Gupta氏とリーダーシップチームによって2014年頃に開始されました。2014年の初めにAlibabaのCEOであったJack Maと会談したGupta氏は、ハイテク企業の脅威を強く印象づけられ、DBS銀行の競争相手は他の銀行ではなく、Google、Amazon、Facebookといったテック企業だと考えるようになったそうです。その為、自らを「銀行サービスを提供するテクノロジー企業」であると宣言し、他の大手テクノロジー企業がどのように技術を構築・利用して素晴らしい顧客体験を生み出しているかを研究していく中で、Gupta氏らは従来の銀行とは全く異なるDBSを想像し、GANDALFというキャッチ―な言葉で目指すべき自社のポジションと新たなマインドセットを表現しました。(ガンダルフとは英国のJohn Ronald Reuel Tolkienが書いた『指輪物語』に登場する魔法使い)
G - Googleのようにオープンソースソフトウェアを使用する
A - Amazonのようにクラウドプラットフォーム上でソフトウェアを動かす
N - Netflixのようにデータと自動化を大規模に使い、おすすめをパーソナライズする
D - DBS
A - Appleのようなデザインを適用する
L - LinkedInのように継続的に学習を進める
F - Facebookのようにコミュニティの構築に重点を置く
このGANDALFという目標は、組織に統一された目的意識を与えるだけでなく、DBSの企業文化の変革にも寄与しています。継続的に学ぶ文化を醸成するための社内の研修制度「GANDALF Scholars」は、学んだことを同僚に教えることを条件に、社員が好きなテーマを学ぶための助成金(1人1,000シンガポールドル)を提供するというものです。2020年時点で350人以上の「GANDALF Scholars」が、14,000人以上の社員と学びを共有してきました。
「Make Banking Joyful(銀行業務を楽しくする)」というビジョンもこの頃に打ち出されました。銀行業を楽しくというのは、一見すると想像が難しいですが、テクノロジーを活用し、顧客にとって銀行業務を目に見えないものにすることで、この楽しさを実現することをDBS銀行は目指しました。「銀行業務というのは、やるべきことのほんの一端でしかない。銀行を楽しくするためには、銀行の部分を見えなくすればいい」と説明しています。またこのビジョンの実現には、スタートアップ文化の醸成も不可欠だとリーダーシップチームは考え、約33,000人の従業員にスタートアップの感覚を与えるような、確立したい文化の特徴をABCDEという頭文字をとって、体系化しました。
Agile (迅速に対応する)
Be a learning organization (新しいアプローチでビジネスに取り組む)
Customer-obsessed (顧客のペインポイントを理解する)
Data-driven (データを総合的に活用し社内プロセスを変革する)
Experiment and take risks (4Dプロセスの奨励: Discover, Define, Develop, and Deliver)
同行は「世界最高の銀行」になるまでの過程の中でその収益を2014年の96億シンガポールドルから、2021年は143億シンガポールドルへと急増させましたが、その背景にはこうした取り組みがあったのです。
【日本の銀行の未来は】
皆さん、如何でしたか?日本の銀行の未来はどうなるのでしょうか? 業績は回復しているようですが、デジタル化に課題が沢山ある様に思います。DBSの取り組みは、日本の銀行にとっても、非常に示唆に富むものだと感じるのですが。
出典:https://wisdom.nec.com/ja/series/yamaguchi/2022072501/index.html
出典:https://www.dbs.com/jp/default.page
出典:https://monstar-lab.com/dx/about/dx-finance/
「アジアらしさ」を実現するために、PIE(Process improvement events)と呼ばれる部門横断的なチームを組成、銀行のサービス上の課題(例:クレジットカード紛失した場合の交換にかかる時間)に対し、1週間以内に実行可能なプロセス案を検討しました。PIEによってさまざまな業務プロセスが迅速かつ目に見える形で改善され、インセンティブを用いずとも組織全体の社員の意欲を高めることができました。
経営陣は組織のプロセス改善だけでなく、顧客サービスの改善にも取り組みました。顧客の待ち時間を象徴する指標として「Customer hour」という単位を考案し、PIEのコンセプトによって年間2億5千万時間の「Customer hour」を削減することに成功しました。(顧客がクレジットカードの作成に1時間待つと1 Customer hour)この取り組みは、お客様の生活をより良くすることに焦点を当てたもので、銀行の利益を上げることとは異なり、従業員に目的意識を共有させるものでした。
DBS銀行のデジタル化への本格的な取り組みはCEOのPiyush Gupta氏とリーダーシップチームによって2014年頃に開始されました。2014年の初めにAlibabaのCEOであったJack Maと会談したGupta氏は、ハイテク企業の脅威を強く印象づけられ、DBS銀行の競争相手は他の銀行ではなく、Google、Amazon、Facebookといったテック企業だと考えるようになったそうです。その為、自らを「銀行サービスを提供するテクノロジー企業」であると宣言し、他の大手テクノロジー企業がどのように技術を構築・利用して素晴らしい顧客体験を生み出しているかを研究していく中で、Gupta氏らは従来の銀行とは全く異なるDBSを想像し、GANDALFというキャッチ―な言葉で目指すべき自社のポジションと新たなマインドセットを表現しました。(ガンダルフとは英国のJohn Ronald Reuel Tolkienが書いた『指輪物語』に登場する魔法使い)
G - Googleのようにオープンソースソフトウェアを使用する
A - Amazonのようにクラウドプラットフォーム上でソフトウェアを動かす
N - Netflixのようにデータと自動化を大規模に使い、おすすめをパーソナライズする
D - DBS
A - Appleのようなデザインを適用する
L - LinkedInのように継続的に学習を進める
F - Facebookのようにコミュニティの構築に重点を置く
このGANDALFという目標は、組織に統一された目的意識を与えるだけでなく、DBSの企業文化の変革にも寄与しています。継続的に学ぶ文化を醸成するための社内の研修制度「GANDALF Scholars」は、学んだことを同僚に教えることを条件に、社員が好きなテーマを学ぶための助成金(1人1,000シンガポールドル)を提供するというものです。2020年時点で350人以上の「GANDALF Scholars」が、14,000人以上の社員と学びを共有してきました。
「Make Banking Joyful(銀行業務を楽しくする)」というビジョンもこの頃に打ち出されました。銀行業を楽しくというのは、一見すると想像が難しいですが、テクノロジーを活用し、顧客にとって銀行業務を目に見えないものにすることで、この楽しさを実現することをDBS銀行は目指しました。「銀行業務というのは、やるべきことのほんの一端でしかない。銀行を楽しくするためには、銀行の部分を見えなくすればいい」と説明しています。またこのビジョンの実現には、スタートアップ文化の醸成も不可欠だとリーダーシップチームは考え、約33,000人の従業員にスタートアップの感覚を与えるような、確立したい文化の特徴をABCDEという頭文字をとって、体系化しました。
Agile (迅速に対応する)
Be a learning organization (新しいアプローチでビジネスに取り組む)
Customer-obsessed (顧客のペインポイントを理解する)
Data-driven (データを総合的に活用し社内プロセスを変革する)
Experiment and take risks (4Dプロセスの奨励: Discover, Define, Develop, and Deliver)
同行は「世界最高の銀行」になるまでの過程の中でその収益を2014年の96億シンガポールドルから、2021年は143億シンガポールドルへと急増させましたが、その背景にはこうした取り組みがあったのです。
【日本の銀行の未来は】
皆さん、如何でしたか?日本の銀行の未来はどうなるのでしょうか? 業績は回復しているようですが、デジタル化に課題が沢山ある様に思います。DBSの取り組みは、日本の銀行にとっても、非常に示唆に富むものだと感じるのですが。
出典:https://wisdom.nec.com/ja/series/yamaguchi/2022072501/index.html
出典:https://www.dbs.com/jp/default.page
出典:https://monstar-lab.com/dx/about/dx-finance/
