本文へ移動
未来に向けた学び・成長・共感の場を創造し挑戦し続ける人や
組織の開発と発展に貢献します。
フィープラーニングは、時代のニーズにマッチした
旬な教育テーマの「企画」と「コンテンツ開発」を提供します。

投稿記事

<<VUCA時代における企業のインテリジェンス機能強化>>

2023-03-07
2月28日付の日経新聞の記事に興味深い一文を発見しました。
(以下、引用文)
『サントリーホールディングスは1月1日付でインテリジェンス推進本部を新設した。米国などのシンクタンクや議会と接点を持ち、地政学リスクや政治動向への感度を高める。ディープな情報収集を意味するインテリジェンス活動を通じて将来を先読みできれば、変化に機敏に対応できる。東アジアでは将来的な台湾有事などのリスクも取り沙汰されている。「様々な事象が間近に起きる可能性を念頭に置くべきだ」(新浪剛史社長)という。』
(引用終わり)
この数年で、予測不可能な時代を強く思わせる出来事が数多く起きています。すなわち、
・新型コロナウィルスの世界的流行
・ロシアによるウクライナ侵攻
・急激な物価上昇
・歴史的な金利上昇
・記録的な円安
などです。

予測困難な時代、VUCAの時代において、企業のインテリジェンス活動の重要性が増しています。記事に出てきたサントリーも、2014年の米ビームの買収後、海外売上高比率を高めて50%近くになっている今、グローバルなインテリジェンス活動がより重要と認識し、組織改編を行ったようです。では、企業におけるインテリジェンス活動にはどのようなものがあるでしょうか。

ちなみに、企業のインテリジェンス活動とは、市場や競合情報などの外部情報、顧客や従業員の内部情報、および技術情報など、様々な情報源からのデータを収集、分析し、意思決定に役立てるための活動です。以下に、企業のインテリジェンス活動を6つに分類して説明します。

1.競合情報収集(Competitive intelligence)
競合情報収集は、競合他社のビジネス戦略、製品やサービスの特徴、価格設定、マーケティング戦略、財務情報などを収集することです。競合情報を収集することにより、自社の競争力を高め、市場での立ち位置を把握することができます。最近では、企業間の垣根を越えて、米中など国家を巻き込んだ競合情報収集が活発になっています。

2.マーケット・インテリジェンス(Market intelligence)
マーケット・インテリジェンスは、市場におけるトレンド、需要と供給のバランス、市場規模、セグメンテーション、価格帯、購買行動などの情報を収集することです。マーケット・インテリジェンスにより、市場のトレンドやニーズを把握し、
市場参入の意思決定や市場戦略の策定に役立てることができます。最近では、MIツール(情報システム)の活用により
迅速に情報を収集・分析できるようになっています。

3.テクノロジー・インテリジェンス(Technology intelligence)
テクノロジー・インテリジェンスは、新しい技術や製品、特許や特許出願情報などの技術情報を収集することです。テクノロジー・インテリジェンスにより、自社の技術力を向上させ、新製品の開発や技術投資の意思決定に役立てることができます。最近では、知財の分野で「IPランドスケープ」が注目されています。

4.リスク・インテリジェンス(Risk intelligence)
リスク・インテリジェンスは、政治的、経済的、社会的なリスク、自然災害、テロなどの危機管理情報を収集することです。リスク・インテリジェンスにより、危機管理の意思決定やリスク管理の強化に役立てることができます。最近は、サイバー攻撃のリスクが高まっており、この分野の対策が急務です。

5.サプライチェーン・インテリジェンス(Supply chain intelligence)
サプライチェーン・インテリジェンスは、サプライチェーン全体に関する情報を収集することです。サプライチェーン・インテリジェンスには、サプライヤーの選定、在庫管理、物流戦略、コスト削減、リスク管理などが含まれます。サプライチェーン・インテリジェンスにより、サプライチェーン内での改善ポイントを見つけ、サプライチェーンの効率性を向上させることができます。最近では、コロナ禍で半導体不足が生じ、生産活動に大きな支障をきたす出来事が起こりました。在庫量の適正水準が見直されています。また、違法労働による生産活動やCO2排出量の把握のため、サプライチェーン・マネジメントが強化されています。

6.カスタマーインテリジェンス(Customer intelligence)
カスタマー・インテリジェンスは、顧客の嗜好や行動、購買履歴、顧客満足度、顧客関係管理などの情報を収集することです。カスタマー・インテリジェンスにより、顧客満足度を高め、顧客ロイヤルティを向上させ、マーケティング戦略の改善や製品の開発などに役立てることができます。最近では、BtoCのみならず、BtoBでも顧客生涯価値(LTV)を重視するようになり、顧客ロイヤリティを意識したサブスクリプションモデルやリカーリングモデルなど継続課金型のビジネスモデルが注目されています。

(最後に)
以前から、企業活動におけるインテリジェンス活動の重要性は認識されていましたが、コストや情報量の問題もあり
多くの企業は、情報収集・分析が十分に行われていませんでした。しかし、インターネットの普及やAIの進化に伴い、
情報収集・分析に関するコストと能力は飛躍的に改善されています。予測不可能な時代に、改めて、インテリジェンス機能を強化できる環境が整いつつありますので、実践する企業とそうでない企業で競争力においていずれ大きな差が生まれるのではないでしょうか。サントリーのように、日本企業に「インテリジェンス推進本部」なる部署が増えることを願っています。

<関連記事>
日本経済新聞 2023年2月28日付「未来を読む」非財務の価値
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68814820X20C23A2DTA000/