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2023-07-31
Appleが始めた普通貯金サービスの狙いは何か?
2023年4月米国Appleは、Goldman Sachs(同社の普通預金口座を利用)と組んで、「Apple Card」の会員向けに、年利4.15%の普通預金サービスを開始しました。本サービス開始からわずか4日で9億9000万ドル(約1350億円)の預金を獲得しましたが、想定外のペースでの事業展開が出来た背景は、

 ・ 高い知名度と信頼度 (着実な収益基盤のあるAppleが運営するサービスなら元本は毀損しないという信頼感)
 ・ 高金利 (全米における平均的な預金金利は0.40%程度)
 ・ 簡単な手続き (Apple Cardを契約しているユーザーは、iPhoneのウォレットアプリから口座開設画面に進み、社会保障番号を入力、いくつかの質問に答えるだけで口座開設が可能)

同サービスは、手数料・最低入金額・最低残高要件が無く、ユーザーが獲得したすべてのDaily Cash※1が自動的に口座に入金され、Daily Cashの宛先はいつでも変更可能で、Daily Cashユーザーが獲得できる金額に制限はありません。貯蓄を増やすために、ユーザーはリンクされた銀行口座を通じて、あるいはApple Cash残高から追加の資金を普通預金口座に入金可能です。

同社がこのままのペースで顧客を獲得した場合、中小銀行からの預金流出が激しくなると予想されますが、Appleの本当の狙いは、ユーザーを囲い込む「アップル経済圏」をより強固なものにし、次に買うスマートフォンもiPhoneを選んでもらうことかもしれません。(iPhoneはアップルの売上高の5割超を占め、採算も高い稼ぎ頭です)
或いは、中国のアリババグループのアントグループが提供する「余額宝(ユエバオ) 」※2の様に、利用者にとっては非常に便利で、有効なサービスを提供することにより、金融機関として新たなビジネスを考えているのでしょうか?


※1 Daily Cashは、Apple Cardによる還元ポイントをApple Cashとしてキャッシュバックする仕組みです。Apple Pay利用時の還元率は2.0%で、Apple製品の購入時なら3.0%、しかも年会費は無料、支払い手数料・延滞金・海外決済手数料です。また、支払い遅延時のペナルティ金利も発生しません。カードの利用代金は銀行口座(ACH)またはApple Cashで支払います。更にApple Payで決済を行った当日にキャッシュバックされるDalily Cashとなるため還元額をすぐに利用でき、ポイント交換の手間もかかりません。キャッシュバックによる還元は、Walletアプリ内のApple Cashに行われます。

※2 余額宝(ユエバオ) は、1元単位でMMF(Money Market Fundは投資信託のひとつで短期の国債や地方債、社債などで運用します)を購入できるサービスです。スマホに入れたアリペイの口座から1元単位で余額宝の口座に資金を移動、この預けられた資金がまとめられ、複数のMMFに投資されます。資金の額が大きく、利回りも高くなり、この利益をアリペイ利用者に還元をするサービスです。アリペイ利用者は、高い利回りが確保でき、年利7%に迫る高い利息がついた時期もありました。2021年には資産残高が1兆7000億元となりました。(2021年9月の資産残高は7464億元ですが、依然中国内最大のMMF)この為、銀行預金からアリペイ経由でMMFへの資金流出が加速、伝統的な金融機関にとって大きな脅威となりました。