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投稿記事

<<異業種による「ネオバンク」と呼ばれる銀行サービスについて考える>>

2023-12-06
以前Facebook投稿記事でご紹介をした<<Appleが始めた普通貯金サービスの狙いは何か?>>について、もう少し考えてみたいと思います。
以前の記事:
https://fieplearning.com/pages/54/detail=1/b_id=288/r_id=47/block288_limit=20#block288-47

2023年4月に開始された、Appleの年利4.15%の普通預金サービスは、開始からわずか4日で9億9000万ドル(約1350億円)の預金を獲得、7月には残高が100億ドル(約1兆4300億円)と想定外のペースで利用者が拡大をしていますが、日本でもAppleと同様に、異業種による「銀行サービス」の展開が始まっています。

【異業種による「ネオバンク」と呼ばれる銀行サービス】
Appleと同様に日本においても、JALや高島屋、ヤマダデンキなど、異業種による「ネオバンク」と呼ばれる銀行サービスが広がっています。「ネオバンク」は、自らは銀行免許を持たず、既存銀行のインフラを利用し、金融サービスを主にスマホなどで提供しています。

例えば、「暮らしまるごと」戦略を掲げるヤマダホールディングスによる「ヤマダNEOBANK」は、ヤマダデジタル会員専用のサービスで、預金、振込など銀行機能を備え「ヤマダポイント」が利用状況に応じて獲得できます。住宅ローンでは、家具や家電の購入費用も組み込むことが可能となっています。

また2022年6月には、金融を百貨店・商業開発に次ぐ第三の柱とする高島屋が「高島屋NEOBANK」の提供を開始、預金や振込などの銀行機能に加え、「友の会」のデジタル版にあたる「高島屋のスゴイ積立(スゴ積み)」では、年利15%相当の積立機能も提供しています。

こうした企業には、自社の顧客に、独自の金融サービスを提供することで、Appleのサービスと同様に、顧客の利便性や満足度を高めるとともに、顧客を囲い込むことに加え、金融サービスを新たなる事業の柱にする狙いがあるのです。

住信SBIネット銀行は「NEOBANK」という独自ブランドで、いわゆるBaaS(Banking as a Service)として、銀行が持つ決済・預金・融資などの金融サービスを、APIを介して、非金融事業者に提供しています。顧客は、住信SBIネット銀行の「ヤマダNEOBANK支店」「高島屋NEOBANK支店」に口座を開設していて、実際の預金の預かりや住宅ローンの貸付などは住信SBIネット銀行が行っています。
参考:https://www.netbk.co.jp/contents/neobank/

【広がるネオバンク】
ソニー銀行、セブン銀行、イオン銀行、楽天銀行などが自ら銀行免許を取得し、銀行を設立するケースと比較をして、「ヤマダNEOBANK」「高島屋NEOBANK」のようにネオバンクとして、BaaSを利用して金融サービスを提供するメリットは、時間とコストの節約です。お金を取り扱う社会インフラとして、安全性が最優先で求められる銀行は、自社で銀行免許を取得するには、システム構築などに莫大ばくだいなコストがかかり、認可など手続きや審査にも長い期間を要することになります。これは、米国でも同様で、銀行業への参入ハードルは政治的にも非常に高く、アップルが自社で銀行設立に踏み切らない一因といえます。

一方、銀行サービスを提供する住信SBIネット銀行など既存銀行側のメリットは何かというと、顧客層と手数料の拡大となります。NEOBANKの事例では、高島屋やヤマダデンキの顧客、JALマイレージバンク会員やTポイント会員といった膨大な顧客基盤の何割かを住信SBIネット銀行は取り込むことになります。2023年3月に株式上場した住信SBIネット銀行では、上場によって得た資金を、NEOBANK事業に投じることで、住宅ローンに続く新たな収益の柱を目指しているのです。

このように、巨額のコスト負担なくスピーディに銀行業務に参入できることから、この先も、日常的に顧客と多くの接点を持ち、デジタル会員のIDを多数保有しているような非金融企業によるネオバンク設立が続くと考えられます。

楽天モバイル事業で苦戦する楽天グループにとっても、2023年4月に株式上場した楽天銀行の価値を高めるべく、ネオバンク支援事業による業績拡大への期待も高く、ふくおかFGのデジタル銀行子会社である「みんなの銀行」では、BaaSの提供により、「みんなの銀行ピクシブ支店」と「みんなの銀行テンプスタッフ支店」を展開しています。また、GMOあおぞらネット銀行やSBI新生銀行に加え、北國FHDやきらぼし銀行などが、BaaSの提供によるネオバンク支援事業を打ち出し、三菱UFJ銀行がNTTドコモとスマホアプリ「dスマートバンク」をスタートさせています。

今回は「ネオバンク」について考えてみました。異業種による銀行免許を持ったネット銀行は、その利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、シニア層に至るまで幅広い層で利用されるようになっています。それに加え、固定顧客を持つ異業種のネオバンクが参入することで、ユーザーにとっては選択肢が増え、多様で利便性が高いサービスが提供されるという、メリットになります。一方で、店舗ネットワークと営業員を活用し、対面サービスを提供してきた既存のメガバンクや地銀などの多くには、逆風となる可能性があります。

出典:
https://president.jp/articles/-/69527