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<<中国テック企業の社会インフラ化が生む課題と中国規制当局の対応>>
2023-01-08
日本経済研究センターは2021年末、中国の名目GDPが米国を上回るのは2033年になるという予測を公表しました。同センターが1年ほど前に示していた「早ければ2028年、もしくは2029年」という予測と比較すると、逆転の時期は4~5年遅れています。その主な原因が、民間企業への規制強化による生産性の伸びの鈍化と、長期的な人口減による労働力不足です。
また中国政府の2022年成長率目標は「5.5%前後」ですが、世界銀行が9月時点で大幅に下方修正した予測は2.8%でした。今再試算すれば米国に追い付く時期の一段の遅れは必至と言えます。これには、ドル高・元安傾向の為替レートも関係していますが、そもそも追い付けくことが出来るのかも議論となってきます。
上記の様な状況になった要因の一つは、「民間企業への規制強化」ですが、今回はアリババグループのアントグループの提供するサービスと、同社を含めた中国テック企業が提供するサービスに対する中国政府の規制の動きについてみてみます。
また中国政府の2022年成長率目標は「5.5%前後」ですが、世界銀行が9月時点で大幅に下方修正した予測は2.8%でした。今再試算すれば米国に追い付く時期の一段の遅れは必至と言えます。これには、ドル高・元安傾向の為替レートも関係していますが、そもそも追い付けくことが出来るのかも議論となってきます。
上記の様な状況になった要因の一つは、「民間企業への規制強化」ですが、今回はアリババグループのアントグループの提供するサービスと、同社を含めた中国テック企業が提供するサービスに対する中国政府の規制の動きについてみてみます。
■生活サービスプラットホームとして拡大するAlipayとWeChat pay
支付宝(Alipay)と微信支付(WeChat pay)が中国のキャッシュレス決済市場で拡大をしていますが、決済アプリとしてだけで拡大としているのではなく、生活サービスプラットホームとして拡大をしているということが重要です。
例えば、Alipayアプリから、飛行機や新幹線等の時刻表、空席情報を検索、予約、購入し、そのまま空港や駅に向かうことが出来ます。またレストランを検索、メニューを見て注文、配達を頼むことが出来ますし、水道光熱費、通信費、税金、交通違反の罰金の支払いもAlipayアプリの中で出来ます。医薬品を購入、配送してもらうことも、病院の予約、タクシーの呼び出し、宅配便のピックアップも出来ます。
Alipay、WeChat payにとって重要なのは上記の様な生活サービスプラットフォームの充実であって、普及期には設備投資が不要なQRコードを採用、QRコードが普及したら、よりユーザー体験の優れた顔認証決済を採用します。つまり、キャッシュレス決済は入り口にすぎず、いかに消費者にとって魅力的な生活サービスプラットフォームを用意することができるかが重要なのです。
ここでは、支付宝(Alipay)のサービスの中で非常に人気のある、「余額宝(ユエバオ) 」と「相互宝(シャンフーバオ)」というサービスを紹介します。両サービスとも、利用者にとっては非常に便利で、有効なサービスですが、既存ビジネスにとっては、大きな脅威となっています。
出典:極権・習近平 中国全盛30年の終わり (日本経済新聞出版) Kindle版
■余額宝(ユエバオ)
余額宝(ユエバオ) は、1元単位でMMF(Money Market Fundは投資信託のひとつで短期の国債や地方債、社債などで運用します)を購入できるサービスです。スマホに入れたAlipayアプリの口座から1元単位で余額宝の口座に資金を移動、この預けられた資金がまとめられ、複数のMMFに投資されます。資金の額が大きく、利回りも高くなり、この利益をAlipay利用者に還元をするサービスです。Alipay利用者は、高い利回りが確保でき、年利7%に迫る高い利息がついた時期もあり、2021年には資産残高が1兆7000億元となりました。(2021年9月の資産残高は7464億元ですが、依然中国内最大のMMFです)この為、銀行預金からAlipay経由でMMFへの資金流出が加速、伝統的な銀行、証券会社にとって大きな脅威となりました。
余額宝(ユエバオ) は、1元単位でMMF(Money Market Fundは投資信託のひとつで短期の国債や地方債、社債などで運用します)を購入できるサービスです。スマホに入れたAlipayアプリの口座から1元単位で余額宝の口座に資金を移動、この預けられた資金がまとめられ、複数のMMFに投資されます。資金の額が大きく、利回りも高くなり、この利益をAlipay利用者に還元をするサービスです。Alipay利用者は、高い利回りが確保でき、年利7%に迫る高い利息がついた時期もあり、2021年には資産残高が1兆7000億元となりました。(2021年9月の資産残高は7464億元ですが、依然中国内最大のMMFです)この為、銀行預金からAlipay経由でMMFへの資金流出が加速、伝統的な銀行、証券会社にとって大きな脅威となりました。
■「相互宝(シャンフーバオ)」
「相互宝(シャンフーバオ)」は、重大疾病などに罹患した場合、加入者がリスクをカバーしあうサービスです。加入者数は1億人を突破しましたが、従来の保険商品とは仕組みが大きく異なり、「後払い」の保険です。たとえば、「がん+重大疾病99種類+希少疾病5種類」にかかると最大30万元(約480万円)の保険金が支払われますが、毎月の掛け金は、この支払われた保険金の総額に、運営の手数料として8%が上乗せされて、加入者“全員”で頭割りされる保険なのです。この頭割りされた金額は非常に安く、瞬く間に全土に広がりました。
この膨大な加入者を抱えている相互宝が2022年1月28日を以って運用が終了しました。普及の背景には、運営側のプラットフォーマーが持つエコシステムで集められた膨大な消費・金融・医療などの行動、個人情報の活用がありましたが、保険商品と同様の規制や、保険会社のような厳しい監督・管理を受けていないという課題もありました。何れにしても既存の保険会社にとって、このようなサービスは大きな脅威となってました。
出典:https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=69896?pno=2&site=nli
出典:NRI C h i n e s e f i n a n c i a l m a r k e t s 中国金融市場
出典:https://www.sbbit.jp/article/fj/52244
■中国規制当局が、イノベーション一辺倒から、秩序ある発展へ
中国に限らずフィンテック企業は、既存の金融ルールを破壊するため、金融当局、金融機関とは緊張関係になります。2020年末の時点では、アリババグループ及びアントグループだけの問題と見られていたIPO(新規株式公開)の突然の中止は、2021年に入るとターゲットはアリババグループだけではないことが明らかになってきました。いつ取り締まりの対象になるのかわからないとの懸念が広がり、中国テック企業株は全面安の展開が続いています。この背景には色々と理由があると思いますが、アリババ、テンセント等のプラットフォーマーによる、社会インフラ化が大きな課題としてあるようです。
出典:https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220913/se1/00m/020/022000c
出典:第309回NRIメディアフォーラム アリババ・テンセント・アントグループの戦略転換
出典:第309回NRIメディアフォーラム アリババ・テンセント・アントグループの戦略転換
