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<<インドの世紀が到来か?>>

2023-01-23
世界の各機関が、インドに関して以下の予測をしています。
① 国連推計データによると、1950年代以降初めて、インドの人口が中国を抜き14億人を超え世界最大となった。
② 国際通貨基金(IMF)は、2022年のインドの国内総生産(GDP)が旧宗主国の英国を上回り、世界5位に浮上した。
③ アジア開発銀行(ADB)は2023年の成長率を7.2%と、域内46カ国・地域で最も高い数値を予測した。
④ 国際協力銀行(JBIC)は、2022年度インドが3年ぶりに、今後の海外展開の有望国の首位へ返り咲いた。

更にGDPについては、2025年にドイツ、2027年には日本を追い越し、米中に次ぐ世界3位となりそうで、インドのモディ首相は独立100周年の2047年までに先進国入りすると公言しています。内需の潜在力に、米中対立やコロナ禍を経たサプライチェーン(供給網)多様化の追い風が吹く中、米アップルは主に中国で生産してきたiPhoneの最新機種「14」をインドで組み立て始めましたし、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業はインド資源大手と合弁で、半導体のインド生産に動き出しています。

正に「インドの世紀が到来」と言えるかもしれません。今回はインドパワーの源泉となっている、IT人材について考えてみたいと思います。


【IT人材を輩出するインド工科大学】
インド工科大学(インドこうかだいがく、Indian Institutes of Technology; IITs)は、工学と科学技術を専門とする、インドの23の国立大学の総体、または、その各校のことで、IITsは科学者と技術者を養成する国家的な重要性を有した研究機関と位置づけられ、研究水準の高さは国際的にも認められています。

毎年、高校を卒業する約1200万人の学生のうち、約1万6千人がIITs入学しますが、最も人気なのが、コンピューター・エンジニアリングとなっています。その難関を突破した学生たちの優秀さは折り紙付きで、毎年多くの新卒学生が数十人単位でアマゾン、グーグル、マイクロソフト、メタ等米国ITトップ企業に採用されています。

有名企業の経営者たちにもインド出身者が多数おり、例えば。米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)、米アルファベットのスンダー・ピチャイCEO、IBM CEOのアルビンド・クリシュナ、Adobe CEOのシャンタヌ・ナラヤンなど、若くして海を渡ったインド出身者たちが米IT大手の経営担っています。

また米スタンフォード大学の調査によれば、1997年から2019年に生まれた米国ユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未上場企業)500社の創業者1078人のうち、インド系は米国人に次ぐ90人を占めています。2022年10月20日時点でのインドのユニコーン企業の数は米国企業が646社、中国企業が172社に次ぐ世界第3位で71社となっています。因みに日本企業は6社となっています。

ヒューマンリソシアが2020年7月に発表した調査結果よると、情報通信技術関連を専攻したIT分野の卒業者数は、全世界で年間約151.2万人にのぼり、国別ではインドが1位となっています。1位の「インド」が55.0万人、2位「米国」14.8万人、3位「ロシア」9.3万人で、「日本」は、3.4万人で9位となっています。尚、中国は同等のデータが取得できず対象外となっていますが、エンジニアリング専攻の大学学部卒業者数は、インド(55.0万人)の2倍以上となる118.0万人となっています。

一方、中国と同様に、人口が多いインドでは幼少期から競争の中に置かれる機会が多数あるため、インド人はトップになりたいという思いが強く、できないことも「できる」と答えてしまう傾向があります。そのため無茶な納期の案件を受け、結果的に間に合わないことも発生します。採用時の応募書類にも「できるであろうこと」が混じっていることが多々あるため、確認は念入りに行うことが重要です。また、チームで協力して利益を分け合う習慣がないため、チームワークがやや苦手な人も少なくありません。

日本には「多芸は無芸」ということわざがありますが、インドでは「多芸は有能」という考え方が強く、マルチタスクで仕事を行うのが好きな人が多くいます。IITsの様な上位大学出身者ほど新しい仕事へのチャレンジを望む傾向にあり、既存のプロセスに従いつつ、より効率の良いやり方を模索し、提案するのが得意といえます。この当たりの事情は、中国に通じるものがあるように感じます。


最後に、少し古いですが、元ソニー・インディア・ソフトウェア・センター社社長の武鑓 行雄が 「日本企業はシリコンバレーへ。シリコンバレー企業はインドへ―世界をリードするインドIT業界とイノベーションの新潮流」という本を出版されています。非常に示唆に富む内容なので、ご一読をお勧めします。

日本の16倍以上の理工系人材を輩出し、幼少期からの厳しい競争環境の中で、上昇志向を持ち続けて、果敢に挑戦をするインドの人材。
このインドの人材と、如何にビジネスを進めていくのかを考える事が、今の日本にとっては、非常に重要なことと感じるのですが、皆さんはどの様に考えますか。