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<<ポストコロナ時代の日本の観光戦略>>

2023-05-09
ゴールデンウィークが終わりましたが、5月8日より、新型コロナが感染症法上の5類に移行し、ようやく通常の生活に戻れそうです。そして、この約3年間、大きな打撃を受けた観光産業も持ち直しつつありますが、コロナ後(ポストコロナ)の観光業の戦略がコロナ前と同じに戻るかというとそうではありません。戦略変更の背景には、世界情勢の変化や訪日客のセグメントやニーズの変化があるのです。今回は、ポストコロナ時代の観光産業がとるべきインバウンド(訪日客)戦略について一緒に考察してみたいと思います。

まず、基本的なデータで日本の国内観光業を確認しておきます。訪日客(観光および商用)の消費金額と日本人の国内観光の消費金額、それぞれどのくらいかご存じでしょうか。コロナ禍期間中は訪日客が極端に減ってしまったので、2019年の数字でお答えしますと、

・訪日客の国内観光消費額(買い物、宿泊、国内移動等):4.8兆円
・日本人の国内観光消費額(同上):22兆円
(ちなみに、日本人の海外旅行消費額:1.2兆円)
(出典:観光庁)
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001342441.pdf

メディアは、訪日観光客の話題を多く取り上げますが、実は消費額では、訪日客が18%に対し日本人国内旅行客が88%と、圧倒的に、日本人国内旅行客の消費額のほうが大きいのです。但し、伸び率が訪日客のほうが大きいので、
メディアが盛んに取り上げる、というからくりになっています。
政府は、コロナ禍前に「2030年までに訪日客数6000万人」の目標を掲げていました。2019年に3188万人を記録しましたが、コロナ禍を経てあと7年で6000万人というのはかなり無理がありそうです。とは言うものの、国内観光業の伸びしろは「インバウンドにあり」ということで、今回は、インバウンドに絞って国内観光業の今後の戦略を考察したいと思います。

では、伸びしろが大きいインバウンド需要を確実に刈り取っていくには、どうすればいいでしょうか。今回は、考えるヒントとして、JTBグループのインバウンド専門会社、JTBグローバルマーケティング&トラベルが提示する3つのキーワードをご紹介します。

■キーワードその1:地方分散
大都市の観光を一通り終えた訪日リピーターが地方の複数都市を周遊するケースが増えています。また、富裕層が長期滞在地として選ぶのが歴史ある地方であることにも注目です。また、「オーバーツーリズム(観光公害)」を避けるためにも、地方分散が必要です。この数年で、富裕層も満足できる高級ホテルが地方に多く開業していますが、そこに足を運んでもらうためのプロモーション活動が重要となります。そのヒントとなるのが、次の2つのキーワードです。


■キーワードその2:サステナブル(持続可能性)
「サステナブル・ツーリズム」という言葉をご存じでしょうか。実は、欧米ではサステナブル・ツーリズムが盛んで、サステナブル・ツーリズムの審査を行う代表的な第三者国際認証団体Travelifeがオランダにあります。JTBグループはこのたび、最上位の認証を取得しました。
日本は北海道から沖縄まで、文化や自然の保全を当たり前のように行っており、サステナブル・ツーリズムの資源は豊富ですが、日本人はなかなかその資源に気づかず、むしろ訪日客の方が敏感です。サステナブル・ツーリズムの資源は国内に豊富にありますので、あとは、それをうまくパッケージ化(商品化)し、海外にうまく情報発信できるかが課題です。JTBグループでは石川県と連携して「サステナブル推進モデルツアー」を開発し、SDGsの取り組みや背景をガイドから伝える仕組みをつくり、ツアーの中に組み込んでいます。

■キーワードその3:アドベンチャー
「アドベンチャー・トラベル」という言葉をご存じでしょうか。アドベンチャー・トラベルは、アクティビティ、自然、異文化体験の3要素のうち2つ以上を含む旅行形態を指し、欧米市場では非常に大きなニーズが存在します。アドベンチャー・トラベルに関しては、同分野の国際団体ATTAによる「Adventure Travel World Summit(ATWS)」が2023年9月に北海道で開催される予定です。食事やアクティビティなどの関連消費は大きく、旅行期間も通常の旅に比べて長いため、消費額は必然的に高くなります。ATWSを契機に、欧米の富裕層が日本のアドベンチャー・トラベルに注目するはずです。

(さいごに)
旅行業界が新たなトレンドをつくり、観光客がそのトレンドに乗ると大きな実需につながります。今回は、JTBグループが描く3つのトレンドをご紹介しましたが、ぜひ、情報感度を上げて、ご自身なりに今後のインバウンド観光のトレンドを
予測してみてください。
今回は、日本人による国内観光旅行は取り上げませんでしたが、消費金額は圧倒的に大きいので、この分野のトレンドも意識して情報収集しておくといいですね。

<関連記事>
▼日本経済新聞 2023年4月23日付 訪日消費、地方の出番 山形、コロナ前の3倍 温泉やゴルフ人気
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70430350T20C23A4MM8000/

▼日本経済新聞 2023年5月1日付観光産業、再成長のカギ デジタルで需要増に応え
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO70602160Y3A420C2TCT000/