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投稿記事

<<AIは軍隊を変える 統合全ドメイン指揮統制構想とは>>

2023-05-15
2023年3月28日の投稿で、「米国防総省がついにAIが操縦する戦闘機の飛行に成功」のお話をさせて頂きました。米国防総省のDARPA(米国防高等研究開発局)が、F-16戦闘機に「アインシュタイン・ボックス」と呼ばれるAIを搭載、4つのAIアルゴリズムが離陸・着陸・ドッグファイト(空中戦)などを、17時間にわたって制御することに成功したという内容です。実用化にはまだまだ時間が必要ですが、AI戦闘機が実用化されると、パイロットに求められる能力が変わるとともに、次世代の航空戦が劇的に変化すると予想されています。本日は既に実用化されている「AI銃」のお話と、戦争の姿そのものを変える可能性がある「統合全ドメイン指揮統制構想」のお話をさせて頂きます。

【兵士が皆ゴルゴ13(ゴルゴサーティーン)※になる】
イスラエルのスマートシューター社が開発したAI銃は、狙撃する相手の兵士をロックオンすると、人工知能(AI)が400メートル先の群衆の中から自動で検知、標的の動きや風速を計算して照準が追尾、あとは引き金を引くだけで狙撃する相手を倒すことが可能なAI銃です。無人航空機(UAV)に取り付け、複数の武器をネットワークでつないで狙い続けることも可能で、米国やインドなど15カ国超が既に導入をしています。通常の自動小銃等に、SMASHという装置を付けることにより、自動小銃を持った兵士が「伝説の狙撃手ゴルゴ13」となるのです。通常の自動小銃等をAI銃にするのは非常に簡単で、
①SMASHを自動小銃等に簡単に装着可能で、装着するだけでAI銃の使用が可能となります。
②狙撃する相手の兵士を高度な画像処理によってSMASHにターゲットとして認識させます。
③SMASHは、自分自身や相手の兵士が動いても、相手の動きを予測してターゲットをロックし続けます。
④ロックした後、引き金を引けば、あとはSMASHがターゲットを確実に倒します。
この様なAI武器が実際に使用されているという事実を知ると、驚きを隠せません。

※「ゴルゴ13」とは、さいとう・たかを、さいとう・プロダクションによる日本の漫画で、1968年11月から小学館「ビッグコミック」にて連載されていて、超一流のスナイパーで暗殺者のゴルゴ13ことデューク東郷の活躍を描く劇画であり、実在の人物ではありません。
出典:
https://www.smart-shooter.com/
出典:
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2310D0T20C23A2000000/?n_cid=NMAIL007_20230420_A
出典:
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%AB%E3%82%B413

【統合全ドメイン指揮統制構想とは】
アメリカ軍は、アメリカ合衆国が保有する軍隊で、陸軍・海軍・空軍・海兵隊・宇宙軍の5軍種からなる常備軍と、平時は海上警備を主とした法執行機関としての役割もある沿岸警備隊を含めた6つの軍種から構成されていますが、各軍が所有している各種情報を統合して、AIを使って戦略を立案するのが、「全領域統合指揮統制(JADC2 Joint All-Domain Command and Control)構想です。アメリカ軍である6軍は、伝統的に他の軍種と互換性のない独自の戦術ネットワークを開発してきたので、米国陸軍のネットワークは米国海軍または米国空軍等のネットワークと連携できませんでした。米国防総省は、将来の戦争では、現在の数日間のプロセスと比較して、数時間、数分、または場合によっては数秒以内に意志決定を下し、作戦環境を分析して命令をする必要があると考えて、この構想を立案しました。
また背景には、中国がAIなどの先端技術を人民解放軍に導入し今世紀半ばに米軍を追い抜く国家目標を掲げていることがあります。現状のままでは中国などに「主導権を握られる」可能性もあり、米国はAIの研究開発予算を年3兆5千億円確保する方針を掲げています。一方中国も研究開発費を毎年7%以上増額する計画を掲げています。

上記構想を分かり易くするために、国防総省では、ライドシェアリングサービスのウーバー(Uber)の例でこの構想を説明しています。ウーバーの仕組みは、ライダー(乗客)用と、ドライバー(運転手)用の、2つの異なるアプリを組み合わせて実現をしています。ウーバー・アルゴリズムが、ライダー(乗客)とドライバー(運転手)それぞれの位置情報、相互の距離、想定移動時間に基づいて、最適なマッチングをおこない、アプリケーションは、ライダー(乗客)をピックアップして目的地に送り届けるまでの、ルートを提示します。このウーバの例と同様に、統合全ドメイン指揮統制(JADC2)は、各軍種が所有する多数のセンサーからデータを収集し、AIアルゴリズムを使用してデータを処理してターゲットを特定し、ターゲットと交戦するための最適な武器をレコメンドし、指揮官が最終的により適切な決定を下せるようにすることを意図しているのです。

出典:
https://milterm.com/archives/1813

今年2月にオランダで開かれた初のAI兵器の規制会議「REAIM※」で、オランダのフックストラ外相が「AIは軍隊を明確に変えている」と発言、米中など約50カ国の参加者にルールづくりの必要性を強く訴えました。また米国政府はAI兵器に関する説明責任などを盛り込んだ宣言を発表しています。「人に従え、されど人を害するな」とは、SF小説家のアイザック・アシモフが1942年に示した「ロボット工学三原則」ですが、今から80年前の空想世界の課題に、人類は今まさに直面していると言えるのです。
ChatGPTの「開発停止」を求めた専門家たちからの「警告」がありましたが、「開発停止」について議論をするとともに、AI兵器の現状及び開発についても併せて議論することが、より喫緊の課題に思えてならないのですが・・・

※軍事領域における責任あるAI利用(Responsible Artificial Intelligence in the Military Domain(REAIM)とは、2022年、技術の急速な発展を踏まえ、人工知能(AI)の責任ある軍事利用について国際的な理解を深めることを目的に、オランダ政府が主導した議論のテーマです。2023年2月16日及び17日、オランダのハーグにおいて、オランダ及び韓国の共催により、「軍事領域における責任あるAI利用(REAIM)」2023年サミットが開催され、政府代表のほか、学術機関、シンクタンク、産業界、市民社会組織の代表が出席し、REAIM宣言が発表されました。日本からは、南駐オランダ大使を代表とし、外務省及び防衛省からなる代表団が参加し、REAIM宣言への支持を表明しました。第二回REAIMサミットは、韓国において開催される見込みです。
出典:
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/arms/page23_004201.html